以前の記事でも少し触れましたが、合奏できちんと合わせるためには弓の圧力をかけすぎない「良い音」で弾く事が必要になります。これは西洋音楽の特性に密接に結びついています。
西洋音楽の特徴のひとつに和声があります。和音の響きの妙が持ち味と言えます。イメージとしては合唱での教会音楽が西洋の音楽の響きとなります。
合唱で歌い手がそれぞれ怒鳴ってしまったらどうなるでしょう?とてもじゃないけれども、合唱として成り立たないものとなってしまうかと思います。
オーケストラで各団員が弓の圧力を力一杯かけて弾いているのは、怒鳴り合っている合唱と同じ事です。独特の「力強さ」はありますが、これはノイズと大差ありません。
合奏で美しい響きにするためには、弦楽器も管楽器も、打楽器すらも「お腹から声を出している」状態で演奏する必要があります。どの楽器も手先・口先だけで力任せに音を出すのではなく、身体の中心に近いところから手先は緩めて音を出す事になります。
ヴァイオリンであれば、実際に腹筋を意識すると「お腹から」の音になります。腹筋を意識しつつ、手先はなるべく緩めて上腕や胸など身体の中心に近いところから音を出そうとすると、ノイズの少ない太い中身の多い音が出ます。ソロにせよ合奏にせよこういった「良い声」で音を出すべきと言えます。
ノイズにノイズを重ねるともっとノイズになります。オーケストラをやると音色が荒れるなどと言われる事がありますがこれは根本的に弾き方が間違っていると思います。周りと溶け合う音色で弾く事がアンサンブルとなり得ます。
合奏こそ「良い声」で。「良い声」で弾くと、音程も音楽的表現もリズムも良い方向へ向かうと考えています。