入門時は片手

何かの文章で「絵画の先生に弟子入りしたい者は片手で門を叩く。もう一方の手には既に作品を持っているからだ」旨、読んだ記憶がある。元の文章が見つからないが、自分の座右の銘のひとつだ。

何かを始めたい時に、習いに行く前に既に初めてしまうのが自分は好み。

ヴァイオリンは5歳の子供の頃だったので楽器店で楽器を用意してもらって才能教育の教室で始めた。だが、ギターは(現代ではやってはいけませんが)粗大ゴミで拾ったエレキギターで、ベースは板切れをノコギリで切って割り箸をペグにしたエレキベースを自作して始めた。ラジカセ(ラジカセなんて死語です)を無理やりアンプにしていたこともあり「音がなんか違う」とは思った^^;

そんなガラクタのようなギターやベースで練習した事が一番勉強になったかもしれない。誰に聴いてもらうものでもなく、評価なんて求めず、自分がそうなれるようにと夢中で。そういう熱量が勉強の原動力だったなあと今になって思う。

ヴァイオリンも最初は先生のご指示の曲をこなすだけだったが、中学生頃から自分で弾きたい曲を取り組むようになってからが伸びたかなあ。もちろん先生のご指導の下地があったからではあるものの、図書館でCDを借りて、弾きたい曲を探してお小遣いを工面しつつ楽譜のコピーを入手したり、機会を見つけては楽器店の展示会で良いヴァイオリンを弾かせてもらったり、が成長につながったと思う。

そんな経緯もあり、形にとらわれず始めちゃう人、自分は好きです。お越しの方の中にも、あまり良くないヴァイオリンを駒を自分で削って調整なさってお使いだった方、いきなりバッハのシャコンヌを始めてしまった方など、レッスンをしつつ心の中では全力で応援していた。

誰かに聴いてもらうなら型こそが重要だが・・・。自分のために弾くのなら「悪い癖がつく」なんて気にせず、ぜひ形にとらわれず始めちゃって下さい^^。既に始めちゃっている方はどんどん自分で先を進めちゃって下さい。それこそが必ず自分の技術になります!「悪い癖」というのは、理にかなっていない弾き方ということで理屈を理解できれば後から修正できます。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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