オールドヴァイオリンの音

土曜・日曜は東京にレッスン。対面レッスンを再開しました。まだすっきりはしないものの、どうにかレッスンが普通にできていればと願っています。ご利用&お越し頂いた皆様有難うございました。

お越しの方から「オールドヴァイオリンの音とは?」とご質問を頂いた。とても良いご質問と思う。「オールドだから良い音でしょ?」「これぞオールドならではの音ですよね!」なんてお店では言われるものだが、そういった幻想のセールストークが実態を見えなくしているのだろうと思う(幻想に酔いたい、幻想を買いたい人が多いことは否定しない)。

よくある聴き比べでも示されるように有意差は無いだろう。それは音の大半は古さではなく作りに依存するからだ。オールドの音としてよく言われる「太い厚みのある音」「空間的に広がる遠鳴りの音」はそう言う音を出せる構造になっているためで、古さとは無関係だ。ただその点でオールド楽器の名品は構造的にとてもよくできている。

古さがあるとしたら「しゃがれ声」。これは材料が経年変化=劣化して生じる音だ。しゃがれ声に味わいを見出す人は多いかも知れないが、素直な美意識とは思えない。それから割れなどの傷みによる異常振動の音。新しい楽器でも割れの修理を行うと「オールドみたいな音」が出る。不健康さに一種の魅力はあるかもしれないが、普通は健康体の方が良いものだろう。

ストラディヴァリでも非常に状態の良い楽器は「オールドみたいな音」はしない。興味深いところだ。ビオンディの弾く1690年のTuscanストラディヴァリが例として挙げられるだろう。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

石田 朋也をフォローする
楽器や弓、アクセサリーの話音色のお話思うこと