土曜・日曜は東京にレッスン。対面レッスンを再開しました。まだすっきりはしないものの、どうにかレッスンが普通にできていればと願っています。ご利用&お越し頂いた皆様有難うございました。

お越しの方から「オールドヴァイオリンの音とは?」とご質問を頂いた。とても良いご質問と思う。「オールドだから良い音でしょ?」「これぞオールドならではの音ですよね!」なんてお店では言われるものだが、そういった幻想のセールストークが実態を見えなくしているのだろうと思う(幻想に酔いたい、幻想を買いたい人が多いことは否定しない)。
よくある聴き比べでも示されるように有意差は無いだろう。それは音の大半は古さではなく作りに依存するからだ。オールドの音としてよく言われる「太い厚みのある音」「空間的に広がる遠鳴りの音」はそう言う音を出せる構造になっているためで、古さとは無関係だ。ただその点でオールド楽器の名品は構造的にとてもよくできている。
古さがあるとしたら「しゃがれ声」。これは材料が経年変化=劣化して生じる音だ。しゃがれ声に味わいを見出す人は多いかも知れないが、素直な美意識とは思えない。それから割れなどの傷みによる異常振動の音。新しい楽器でも割れの修理を行うと「オールドみたいな音」が出る。不健康さに一種の魅力はあるかもしれないが、普通は健康体の方が良いものだろう。
ストラディヴァリでも非常に状態の良い楽器は「オールドみたいな音」はしない。興味深いところだ。ビオンディの弾く1690年のTuscanストラディヴァリが例として挙げられるだろう。