ヴァイオリン演奏の正しさ&楽器店にて好きもの同士の楽しい話

土曜・日曜は東京にてレッスン。ご利用・お越し頂いた皆様有難うございました。

「何が正しいか分からなくなった」と非常に良いご質問を頂きました。
・楽器としてのヴァイオリンの正しさ:周波数レンジの広さと豊かな音量
・音響物理としての正しさ:ノイズの少なさ
・西洋音楽のルールとしての正しさ:リズム・音程・音色
・西洋文化としてのマニュアルとしての正しさ:楽譜に忠実に弾くこと
の観点でお話させて頂きました。「正しい」ことには時代や国によって変化しうるため正答はないが、明らかな間違いでないことの集積が一応の「正しさ」とは言える。

と実際に曲で実践して頂きながらお答えしました。根源的かつ漠然としたお話しですが、お役立て頂ければと思います。

毛替えをして頂きに東中野のレゾネイトさんへ。先日譲って頂いた新作弓。ブラジル弓と言われるもので、30万円〜40万円の価格帯にしては充分良質な弓(半端なヨーロッパ圏の新作弓より余程良い)。ただ、毛には問題ありと考え毛替えを。ひとまず適切な感触になった。オールドボウの芳醇な音というものではないが全然悪くはない。今後、比較的安価にどなたかにお譲りすることになるかもしれないが、きちんとチェックして良い状態にして自信を持ってお渡ししたい。

併せて先日購入のオールドヴァイオリンもお持ちして。とても興味を持って頂き。

楽器に興味の無いヴァイオリニストはすぐに「いくらだった?」「偽物?本物?」「鑑定書ついてるの?」「この傷が」なんて話になるが、実につまらん。好きもの同士ならでの話が楽しい。

自分的には全体的な形状、特徴的なCバウツの形状、楽器としての格からミケランジェロ・ベルゴンツィかニコラ・ベルゴンツィあたりかなあと考えていたのだが、お店に伺ったらその時点でレイト・クレモネーゼの書籍が開かれていて(意識が合っていてとても嬉しい)、
「これは面白いねえ、何だろねえ」
「ミケランジェロかニコラ・ベルゴンツィにも見えますけどピンが無いしパフリングが細めで」
「最近ゾシモ・ベルゴンツィという製作家の話題がThe Strad誌に載っていて」
「誰ですか?その人」
「カルロの息子で、この製作家に鑑定される楽器が出てきていて」
「そんな楽器だと面白いですねえ」
「このコーナーの収束の加減がいいねえ」
・・・
と言った結論の出ない生産性のない話で盛り上がるもの^^;

普通のヴァイオリニストにとっては何を言っているかすら意味不明だろうが、好きもの同士ではとても重要で面白い話(これまでの鑑定結果が覆されるような製作家が注目されているのだから、とても面白い話。確かにIngles&Haydayのサイトにゾシモ・ベルゴンツィが2挺掲載されていた)。

Cバウツの端:コーナーが真横でなく横板の中心の延長へと収束しているのです
消失点へ向かう図形的なセンスというか
こういうのは並の製作家のセンスでは無いのです

AE線のテンションが強いことをお話ししたら、点検の結果エンドピンの穴が中心からずれていることをご指摘頂いた。穴を埋め直して開け直すブッシングをすぐにやって頂いた。すごく弾きやすくなった。

エンドピンの穴の横に埋めた痕跡があるのが分かりますでしょうか?
過去に一度埋めて穴を開け直した痕跡があるのですが、再度の修理に
エンドピンの位置が1.8mm程ずれていたため、AE線のテンションが強くなっていたとのこと
直してもらったらとても弾きやすくなりました

楽器自体の面白さを共有してもらえて嬉しい。手を入れないといけない箇所はまだあるし、数年はトラブルが出るだろうし、本調子が出るまで10年はかかるもの。でも楽しみな楽器。

さまざまな曲を片っ端から弾いてもいる。音楽としても既にいくつかの発見が。もしかしたら曲自体が苦手なブラームスのコンチェルトが理解できるようになるかもしれない。楽器を通じて多くの音楽的な発見ができること、これこそオールドヴァイオリンの魅力ですよね!←これも大半の方には意味不明かとも思うが。