安価な弓のチューンナップ〜音は少なからず改善しました

水曜・木曜は東京にてレッスン。特に暑い中お越し頂いた皆様有難うございました。弓について関心を持って頂いた方も有難うございます。道具がどうこうではなくその道具からどんな音や表現を引き出すかというものと思います。そのためには歴史の勉強も必要になるもので。歴史上の出来事との接点が見出されとても面白いです。

25,000円で販売中の弓。店頭販売価格は最近はずいぶん値上がりして30万円程度とも聞くが、まあ普及価格帯の弓。これをチューンナップしてみようとふと思い立って細かな調整を。以下、お試しになる際にはあくまで自己責任にてお願い致します。弓の性能を大きく損なう場合もあります。

  • セーム皮でスティックを拭く:拭き方次第ですが拭くことでスティックの硬さをある程度変えられる場合も。もちろん音は変化する
  • コルクでスティックのピッチを部分的に修正:スティックのピッチが崩れている箇所をコルクで軽く擦ってピッチを直す事ができる。スティックの振動具合を変えられる
  • 5000番の細かな紙やすりでフロッグやチップの端を磨く:安価な弓にありがちな仕上げの荒い箇所を整える事で、音の雑味を減らせる
  • ロウでネジやスティックとの接点の潤滑を良くする:音の雑味を減らせる
  • 歯ブラシで毛を擦る:音の立体感、ふくよかさが出る

こんなことをやってみたら思った以上に音が改善した^^。もちろんオールド名弓に化けるわけではなく、素質は越えられないものの、音の滑らかさ・音の厚みはこの程度の加工でも少なからず改善できる。

そこそこ良い楽器とあまり良くない楽器の差は仕上げの差とも言える(すごく良い楽器は設計思想の差ですが)。安価なヴァイオリンは仕上げの部分でコストダウンしていると言える。仕上げのよくない部分を解消してあげれば音の上でも仕上がりの良い艶やかな音になる。

逆にある程度高価な良いヴァイオリンや弓は上記のような加工をする必要はない。元々上記のような仕上げはなされているので、余計なことをするとかえって音は悪くなる。

この弓に関してご興味のある方はぜひお試しになってみて下さい。あ、もちろん25,000円のままで販売します^^。

例えば、アンダースライドの端の加工が丁寧さに欠けていたが
少し紙やすりで磨いただけで意外なほどに音は滑らかに

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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