大したものではありませんが新幹線に忘れ物をしてしまい・・・。不覚。とほほ。皆様もお気をつけください。
土曜は東京にて、日曜・月曜は愛知にてレッスン。お越し頂いた皆様有難うございました。リズム感・裏拍の意識で響くヴィブラートがかけられるようになった方もおられ、自分としては嬉しく思いました。ヴィブラートは動かし始めの瞬発力ではなく、動かし続ける持続力なんですよね・・・。
金曜日。展示会開催中の吉祥寺シャコンヌさんへ。自分も51歳になり、手持ちの楽器を少しずつ必要とする方にお役立て頂けるように世の中にお返ししなければと思うのです。展示会にてヴァイオリンを見ることに加え、手持ちのヴァイオリンや弓の将来的な買取の相談にもお付き合い頂き。
ところが。
Interesting violin(こういう表記はTarisioなどのオークションでもなされ「作者不明だが興味深いヴァイオリン」の意味)として展示販売されていたオーラを感じるヴァイオリン(良い楽器は輝いて見えると言うか何かを発している。非科学的だが多くの人が言及すること)。弾いてみると異常に音が良い。しかも安い。

確認のためお借りして持ち帰った。Facebookに書いたが、測定・観察・タッピング音ともに極めて良いとしか思えない。少なからず触って耳と手に染み付いている名器の音と振動を備えている。土曜日のレッスンでも使い実用面の確認もした上で、夕方に再び出かけて購入。安いとは言え、そこそこの価格なので手持ちのヴァイオリン2挺を下取りに加えてある程度のお金を足して。
この楽器、うちではレッスンでご利用頂く楽器にしたり、貸し出すにも都合が良い。オールドなら今さら一つ二つ傷が増えても構わず、お気を遣わせ過ぎない。比較的安価なので、いつかどなたかにお譲りする時も高額になり過ぎないメリットも。

弦高や魂柱を自分好みに直して頂く必要はあり、すぐに作業して頂くことができた。弦高は低めに、音は弦鳴りのハイテンションではなく、張りの少ない箱鳴りが多い音に。お忙しいところ面倒な作業お手数をおかけしました。
楽器の処分をと言いつつ、結局買っているわけで・・・^^;。でも、20年ぶりのオールドヴァイオリンの購入は奇しくも12月13日は亡き父の誕生日。何かのご縁も感じる出会いに嬉しく思います^^。シャコンヌさん有難うございました。

ラベルはあるが、「ロレンツォ・グァダニーニはヴァイオリン製作家ではなかった」が現在の定説。ラベルが頼りにならない典型例。古そうに見せてはいるものの立体感不足でオールドのラベルとは異なる。
ロレンツォ・グァダニーニのラベルで製作したガスパール・ロレンツィーニというG.B.グァダニーニの弟子とされる人物はいるが、ガスパール・ロレンツィーニの方がグァダニーニによほどよく似ている。この楽器はグァダニーニとは全く関係ない人物によるものと自分は思う。

表板。Cバウツやf字孔の造形は左右非対称。自分には左右対称な楽器より興味深い。
アッパーバウツやロワーバウツは比較的丸っこく幅も狭い
変な楽器寸前だが、整った顔つきには思える

割れは当然として、コーナーの木材を継いだ修理、ハーフエッジ、身体の触れる箇所の摩耗、黒色が抜け割れたパフリング、紫外線ライトでニスを見ると後世のニスが何層にもなっているなど、古さの特徴は備えている。

紫外線ライトを当てた写真。iPhoneで撮るとだいぶ実際の見え方と異なるが、年式相応にニスはムラだらけ。ストラディヴァリも含め紫外線で見るとこんな感じで長年に渡る修復が層になっているもの。

裏板は一枚板。胴長353mm。ストップ193mm。横板はスクロール側30mmエンドピン側31mm。このスペックを見るとちょっと詳しい方には喜ばれそうだが、いかにもなスペックでむしろ怪しいと自分は捉えるようにしている。まあそこそこ整った形には見える。上下のピンが無いので、この点でもグァダニーニからは近くなさそうだ。

スクロールは形は悪くないし、材質もそれっぽいし、叩いた音も古い木材の甲高い音がする。けれども渦巻の掘り始めがオールドイタリーにしては浅い印象。別の製作家の作かもしれないし、国も異なるかもしれない。ブッシングは3回、継ぎネックも2回行っているようだ。
演奏は結構難しい。ボウイングは駒からの距離に敏感であるし、顎で挟めばすぐに鳴り止んでしまう。鳴った時は空気を直接響かせるような音がする。ただ、こういう適切に弾いた時だけ鳴る鳴り方や、そのデリケートさは少なくとも悪いヴァイオリンではなさそうだ。
