聴き手に対しては「恐れながら申し上げます」の姿勢

水曜・木曜は東京にてレッスン。遠方からお越しの方もおられ、お越し頂いた皆様有難うございました。自分の側が風邪を引きずって、しばしば咳をして失礼しました。ここのところあまり眠れていないので消耗する・・・。大したコマ数ではなかったのに猛烈に疲れた・・・。

ヘンデルのヴァイオリンソナタ。ヴァイオリンの練習課題として定番中の定番で、小学生の頃弾いたという方も多いだろう。ただきちんと弾くにはとても高度で隙のない音楽だ。さすがはヘンデル。巨匠中の巨匠の作品だ。

音楽を演奏する姿勢として聴き手と演奏者との立場の差は重要だ。

バロック音楽の場合は聴き手は貴族や王族だ。まわりくどい婉曲な言葉を尽くして「恐れながら申し上げます」と話すものと考える。「あり おり はべり いまそかり」の世界だ。音楽家は料理人と同じ立場とされるし、提供する相手は国の中で最上級の教養ある人物だ。作曲家、演奏家、楽器、会場すべてに贅を尽くされる。全てが政治的にも重要な機会だ。ヘンデルのヴァイオリンソナタもそんな中で生まれた曲だろう。

そんな趣旨のお話をした。聴き手との立場の差の意識は重要だ。

以前からお話ししているように、自分ひとりで弾いて楽しむには勝手だが、人前での演奏を「自分が楽しめば聴き手も楽しい」と言ってのける姿勢には自分は猛烈な反発を覚える。「ナメんな!」と言いたくもなる。少しの失敗でムチ打たれる仕事を楽しいと思う人はいないだろう。

自分ですらそんな気概を叩き込まれたものだが、そんなのは昭和の古い発想かもしれませんね・・・。プロじゃないのだから、本職の仕事もあるのだから、どうせ演奏内容なんて誰も聴いていないのだから、自分ひとりが頑張っても変わらないから、etc。まあ、その通りです。令和の時代は皇族ですら軽いのだから、聴き手への尊敬語、謙譲語、丁寧語なんて消滅したのかもしれません・・・。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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