土曜・日曜は東京にてレッスン。暑い中お越し頂いた皆様有難うございました。久しぶりにお越しの方もおられ嬉しく思いました。
少し前にお越しの方とヴァイオリンのニスの話になった。ニスはストラディヴァリの音の秘密として有名だが、当時普通に使われていたものと変わらないと証明されている。
弦楽器専門店のシャコンヌさんで長年見せて頂いたり、自分でも試してみた結果、ニスも音響に思った以上に影響はある。けれども、ニスだけが音の秘密でもない。
自分の知っている「オールドクレモネーゼの秘密」を音に影響あるであろう箇所だけ列挙したいと思う。ストラディヴァリだけが特別ではなく、アマティもグァルネリもストラディヴァリとそんなに違わないし、実際混同されている楽器も少なくないと言われる。
- スクロール:柔らかい削りやすい材料
- ニス:下塗りと上塗りがあり、上塗りは割れるように細かく剥離しほとんど残存しない
- 表板:特に良い材料でもないし概ね当時の同時代。薄く軽い
- 裏板:これも特別な材料でもない。深い杢はニスによって出せる
- 横板:極めて薄い。エンドピン箇所の木目の向きが揃う
- 横板の接合面:Cバウツ側が内側
- 板表面の仕上げ:削りっぱなしではなく、磨かれた仕上げ
- 表板裏板上下の木釘:製作時の固定のため。適当に削っているわけではない
- 裏板中央の穴を埋めた跡:コンパスの針を刺した箇所。きちんと設計しコンパスで長さを測定
- ブロック:ライニングがブロックに刺さる
- ライニング:華奢
- アーチ:ライトを当てて影が生じない角度があり、強度的な特異点がない
すぐに思いつくだけでもこれだけの「秘密」がある。という事は「秘密」は無いということ。あらゆる箇所が音響的に振動を妨げないようによく考慮されて作られている。ひとつやふたつの事で結果が得られるはずはなく、総体としての結果。当時の製作家が記録するまでもなく当たり前と思っていたこと=それが「秘密」なんだろう。

