水曜日は東京にてレッスン。お越しの方有難うございました。天候不安で変更なさった方もおられましたが、結果としては大荒れではなかったものの、危険回避は賢明な判断かと思います。どうぞ無理をなさり過ぎずご利用下さい。
演奏に直結するお話ですが、自動車の話なので関心のない方はパスして頂いて大丈夫です。
「人前での演奏は聴き手を楽しませるもの。演奏者自身が楽しむものではない」と機会あるごとに記している。不評な反応も多いが、一定レベル以上の方には実感として分かってもらえるものと思う。その立場にならなければ理解どころか意味すら分からないことも多いもの。
アルファロメオ4Cを手放して丁度1年。2年間の期間限定の予定通りでお別れしたが、この車の意味を整理するには1年はかかった。
「人前で乗る限り、自身は楽しむものではない」。華やかでありながらもの悲しいイタリアの孤高の芸術品だったと。自身は負担を感じながら道路というステージで求められる華やかな姿を演じ切るもの。これがイタリアの芸術なんだと。
フェラーリよりも過激なアルファロメオ4C。「楽しいのでは?」の漠然とした憧れで入手したが、大半のシーンでは走らせる毎に心身ともに疲弊した。「なにこの車?」と思ったが、人目を集める芸術品と考えれば納得がいった。

足立区の舎人公園です。コロナ後遺症のリハビリで歩きに4Cでよく来ました
歩くことがやっとの状態から随分回復しました
体験がなければ分かりようがないだろう。街中で乗れば視線を集め非好意的な視線も時には感じた。自転車で先回りされ写真を撮られたことも。道の駅で停めればオジサンから声をかけられ、全く関係ないご自身のお話を延々と聞かされたことも。自分にメリットはないが期待される通りに演じなければならない。
人のいない早朝のワインディングで乗る分にはこれほど面白い車はないし、車自身も人の目から離れて生き生きとする。動物園の動物に似ている。人に見られていない時が最も生きている芸術品という矛盾。

朝6時の箱根。早朝のワインディングでは走る芸術でした
車自体がクラシカルな味付けのためか
「刺激」とか「感動」とかではなく、過去現在未来と多くを想起させました
多くを想起させるのは芸術品の証
音楽の演奏、ヴァイオリンの名器・名弓も人前に出せばよそゆきの顔になってしまう。よそゆきを楽しいと言い聞かせるのは自分自身に嘘をついている。動物園のパンダ自身が楽しがっているはずもない(実際かなりのストレスとされる)。
人前の演奏で「演奏者自身が楽しまなくちゃ」の意見に否定的な感情を持っている。それに4Cが一つの答えを与えてくれた。人前でのステージは然るべき姿で出れば強い期待を持たれ、期待と失望の視線に恐怖する場なのだ。精神的な監禁の場。そんなの自分は楽しくない。
心身を削ってのスーパーカー体験から、音楽演奏はもちろん人生観についても学んだ。演奏にも人生にも「人前に出ることが楽しいのでは?」といった憧れは完全消滅した。人前では120%の準備で演じて不甲斐なさに自己嫌悪に陥るもの、楽しみたいのなら自分ひとりでと。

リアルな話をすると800万円で買い600万円で売れた。維持費も普通
一応、JAで野菜を買ってくる日常使いも可能
軽自動車と同等の200万円で全く別世界が見えたのは安かった
その世界を見る勇気と覚悟のある方はぜひ