土曜・日曜は東京にてレッスン。ご利用&お越し頂いた皆様有難うございました。特に強い雨の中お越し頂いた皆様恐縮です。また今回初めての方、久しぶりの方もおられました。お話させて頂いたことをお役立て頂ければと&今後ともどうぞよろしくお願い致します。一方、雨の影響でご都合が合わなくなってしまった方も。またご都合のつく時にご利用頂ければ幸いです。
以下、弓の話ですが興味のない方には全く理解不能なマニアックな話です。上質な弓をお持ちなどご興味のおありな方には面白いお話かも。
雨になって湿度が高くなると弓の毛が伸びる。毛が伸びた状態で弓を適切な張り加減にした時にフロッグの位置は乾燥時よりボタンに近づく。フロッグの位置で音色や弾き加減が変わることは経験上知っており、原因は重量バランスの変化と考えていた。フロッグがボタン側に移動することでヘッド側が相対的に軽くなるためだろうと。

手持ちのオールドボウ2本
湿度で毛が伸びているのでフロッグがボタン寄りに
この位置までフロッグが来ることはあまりない
ただトルテの弓は毛を長めに張ってフロッグをボタンに近づけた方が良いとも言われるし、オールドボウは強めに毛を張って弾いた方が良いとも言われる。これらの理由が長年分からなかった。
で、今回の雨を利用して、毛の張り具合を変えつつ弓を叩きつつタッピング音を確認した。張らない状態ではボタンに近づくにつれてピッチが上がる。弓を張るにつれて、オールドボウは弓を張るとボタン近くのピッチが下がったが、ペカットでは変化なく、安価な弓ではピッチが上がった。フロッグの剛性でピッチが上がるのが当然と考えていたが、オールドボウは逆の結果になった。

フロッグとボタンの間のスティックを叩くことで、張り具合と音の変化を確認した
思った以上に弓の時代ごとに差が出たし、オールドボウは一貫しているようで興味深い
ちょうどオールドボウをお持ちの方がレッスンにいらっしゃったので
試させて頂いたらやはり同様の結果が得られた(変な実験にお付き合い頂き有難うございます)
このオールドボウ特有のピッチの変化が、オールドボウはフロッグをボタン寄りになるよう毛を張ったり、毛を張り気味にした方が望ましい理由なのだろう(もちろんオールドボウにはカットダウンされた弓も多いので単純に結論づけられないが)。ピッチが揃った時は弓を持つ場所にそれほど依存しないようだ。
オールドボウのスティックはボタン側が太めのことが多く、それゆえ高剛性でスティック自体はピッチが高い。この高いピッチがフロッグの位置によって下がることはフロッグの機能を考えた上でも自分としては大発見だ。
それがどうしたという話かも知れない。けれども、この性質を知れば、適切な弓の張り加減を決める要素になるし、湿度で音色が変化する理由にもなる。適切な弓の持ち方や持つ場所も決められる。ひいては良い音を出したりアップボウスタッカートなどテクニカルな弾き方を改善することにもつながる。

カール・フレッシュの書籍の写真は持つ位置がかなり元寄りだ
フレッシュはペルソワを使っていたとされる(写真はより近代の弓に見えるが)
ペルソワにはこの位置で合っていたのかも知れない
なおフレッシュ門下のジネット・ヌヴーはそれほど元には持っていない

たとえばフロッグとスティックをつなぐメネジの締め加減でも音色も弾き加減も変化します
これも緩過ぎず締め過ぎずが求められます
オールドボウはスティックだけでなくフロッグを含めて弓の剛性が設計されているとしたらすごい知恵です