ハイフェッツの推したドント:レッスンの課題を考える

土曜日は東京にてレッスン。ご利用・お越し頂いた皆様有難うございました。本年最後のレッスン、盛況で終えることができました。本年も有難うございました。

現在練習曲をまとめてさらっている最中。レッスンでは通常練習曲として、カイザー、クロイツェル、ローデ、パガニーニを採用している。ご自身では進めることができないものと考えるためだ。ただ、自分自身はセブシック、シュラディックやドント、ガヴィニエもご指導頂いた。

パガニーニは超難曲と扱われるし自分もそう思っていた。けれども、単純なことの組み合わせで効果的になるためのトリックの連続と知るようになった。手品のようにタネ明かしされれば簡単な要素と心理的トリックの組み合わせだ。恐ろしく難しいと感じても、気づいてしまえば全く無理のない技術の組み合わせでできていて、ヴァイオリンの技術として実に良心的に書かれている。クライスラー「プレリュードとアレグロ」と似たようなものだ。

こういうタネ明かしが必要な練習曲をレッスンで採用しようとしている。カイザー、クロイツェル、ローデともにタネ(=課題のねらい)を知っていると進めやすいはずだし、そのタネの蓄積こそが演奏技術なのだ。

ハイフェッツが推したドントはどうだろう?と久しぶりに取り組むと、以前の印象と同じく嫌なパターンの集合だ。引っかかりやすいパターンを多く用意されて上手くなると期待できる。だが、これは指導が必要だろうか?「自分でやっておいて」で済むものではないだろうか(「この程度は自分で解決しておけ」がハイフェッツの気持ちだったのだろうと少し理解できるようになった)。

レッスン時間は限られているもの。人生も有限なもの。それゆえ50分の中に極力多くを詰め込もうとしている。自分自身は単純な言葉で説明できるよう5秒余計な時間を短縮できるよう努力してきた。でも、それが求められていないと思うようにもなった。多くの人は急いで上手くなりたいわけでもない。そうかもしれない。

ドントの採用は迷うところです・・・。初歩でのセブシックも時間の無駄と思ってきたが(弾けるようになってからのセブシックは絶大なる効果があります)これも迷うところ。急がない人にはむしろ向いているのかも知れない。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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