完全に私事のお話、自動車の話題で恐縮です。
金曜日。雨になってしまった。所有のアルファロメオ4Cを予定通りアルファ専門店に買い取って頂きお別れした。別にお金に困っているわけでもなく、自分や家族に突発的な何かがあったわけでもなく、新たな大きな買い物の予定もなく、元々1年か2年の期間限定所有のつもりで予定通り。

購入から1年10ヶ月で11,000kmと多く乗った。自分の大きなテーマのひとつ「ヴァイオリンや音楽を生んだイタリアを知る」ために、スーパーにもコンビニにも温泉にも長距離ドライブにも、農協で野菜やお米を買ったり、農家さんから梨を買ったりもと生活の中で多く使った。購入は2022年の夏。稀有なタイミングだった。実家の母は落ち着いていた時期だった、世の中はコロナ禍、自分はバイクで転んで骨折して4ヶ月で人生をいろいろ考え直していた。



最も尖った車のひとつだ。イタリア以外では生まれ得ない。目的の「イタリアを知る」を五感で教えてもらえた。制約を乗り越えて理想をあきらめず現実にしていく姿勢とそれがもたらす感動。これが音楽やヴァイオリンを生み出してきたのだと。
ミッドシップエンジンならではの流麗な形状、カーボンパネル剥き出しの内装、強烈な加速と強烈なハンドリング、ドライバー自身の耳すら痛くなる派手な音と振動、他の車が大きく見える車高の低さ、少しの段差も気を遣う最低地上高、車幅の広さ、道ゆく人に見られ写真を撮られ時には声をかけられるスター性。スーパーカーとみなして良いと思う。
イメージするようなスーパーカーオーナーの気分も味わえたが、人に見られることはヴァイオリンで充分経験していることで、自分には快感でも心地よいものでもなかった。それよりも同種の車に乗る方々に出会い、現実のオーナーの姿は現実の問題を抱えつつ少年の頃の憧れを諦め切れなかった真面目な方々だった。この車を所有しなければそれこそが本当のスーパーカーオーナーの姿と知る事はなかっただろう。そして理想を諦め切れないのがイタリアかもしれない。スーパーカーオーナーの実像とイタリアが重なる。

都内の日常には存在しにくかった。乗り降りは不自由だ、都内には能力を発揮できる道路が無い、幅が広くすれ違いに気を遣うし駐車場も行き先も限られる、後ろは見えない、視線が低すぎ対向車のライトが眩しい、車高が低すぎ背の高い車には存在を認識してもらえない(事故寸前のシーンもあった)。
またこの日記で「スーパーカーを買ったよ」と書いた途端、レッスンにお越しにならなくなった方もいらした。予想はされたものの、そうか自分にとっての長年の夢も他人にはそういう風に見られるのだと。所詮オジサンになった男の子のバカな無駄遣いにすぎない。その通りだ。社会の中で「理想」や「夢」は好意的には認められにくい存在だ。

子供の頃から憧れたスーパーカー生活を実現でき、多くを体験でき人生を確実に変える事ができた。とは言え、いつまでも同じところで安住したくもないし、自分にとっては充分に味わった。夢を実現できた事は幸運だった。死ぬ時に後悔することはなさそうだ。
無事故・無違反、故障も皆無、1750ccで車重も軽いので燃費も良く、税金など維持費も最小限。買取金額も高かった。事故もなく大きな負担もなく、楽しかった有難うと言えるうちにお別れできた事も幸運だった。興味あるお客様が多いであろう専門店に買い取ってもらった。次のオーナーの元でも元気で走り回って「イタリア」を発散してほしい。


6月初旬に最後の長距離ドライブ:大好きな伊豆スカイラインと箱根に
富士山にも会う事ができました