X(旧ツイッター)での毎日のお話をこちらに移してくることにしました。
バッハ無伴奏の楽譜は多く出版されていますが、シェリング版、フレッシュ版、ガラミアン版がメジャーと言って良いでしょう。それぞれ内容が全く異なります。
取り組む度に発見のあるタイプの音楽、向き合う人によって見え方の変わる音楽なので決定版は無いと思います。叡智を読み取るのが校訂譜の意味なので一冊で安く済ませるという発想はこの曲にはそぐいません(楽譜だけならIMSLPで無料入手できます)。
レッスンでは通常シェリング版を推奨しています。フィンガリングの発想が柔軟でとても面白く、ちょっと考えすぎ感はあれど名人はこういうことを考えていたんだと知ることができます。
音楽の作りとしてはシェリングの師であるフレッシュ版は面白いです。スタッカート、テヌートなどアーティキュレーションが明記されているし、デュナーミクも都度指示があります。「教える側の立場から書かれているね」と私の習った先生はおっしゃっていました。
ガラミアン版もかなり独特です。上記2つと全く違う弓順だったりします。ガラミアンは他の曲でも独特のアイディアになっていたりして面白いです。オリジナルの自筆譜も付いていて、こうやって見比べて演奏を考えるものだと教えられます。
秋の夜長。バッハ無伴奏にじっくり取り組んでみるのも良いかと思います(世の中そんなにヒマじゃないと言われるかもですが)。

ヘンレ版1冊あれば安心というタイプの音楽ではありません
使う楽器や弓によってボウイング・フィンガリングも変わりうるものです
この曲に関しては様々な側面から見られる視点の広さを重視して考えています