火曜〜木曜は東京にてレッスン。ご利用&お越し頂いた皆様有難うございました。Facebookに書きましたが、火曜はレッスン直前に私がお腹が痛くなってしまい、不安を感じつつレッスンが始まったら痛みは忘れいつも通りにレッスンできました。30年のレッスン経験が作った自分の身体に驚きです。
ヒューマンエラーには長年関心を持っている。「なぜ演奏で間違えるのか」が発端かもしれない。大学・大学院で認知科学を学んだのもそのためかもしれない。航空事故などの事故原因をケーススタディとして現在も追っているテーマのひとつだ。
ところで元東京地検特捜部長が2018年に起こした自動車事故の最高裁上告が先日棄却された。当時の報道からは「傲慢な上級国民が車が原因と決めつけゴネている」の印象を持ったが、事故の状況を調べたらまさかの不幸な事故なのだと知った。
要約すると「エンジンをかけたまま運転席から出ようとした時に左足でアクセルを踏んでしまった」ということのようだ。右足ではなく左足だったのが不幸だ。加速Gで体がねじれ一層アクセルを踏み込むことになったのだろう。この状況ではブレーキは踏み得ない。かかっていたパーキングブレーキもエンジンのパワーに勝てなかった。加速が強力なハイブリッドのレクサスならなおさらだ。
話をヴァイオリンに戻す。
人前での演奏をする方へのレッスンではヒューマンエラーを起こさない工夫をお話する。失敗をしないためには失敗の原因を取り除くことだ。当たり前のことのようだが、原因を放置したまま「練習を頑張る」に帰結してしまっているケースは多い。
例えば、速いパッセージで失敗するのは練習不足が原因ではなく「フィンガリング自体が不合理な場合」と「ボウイングとのコンビネーション不良」がとても多い。前者なら合理的なフィンガリングにするのが解決だ。後者ならボウイングの問題の解消が解決となる。
レッスンでその都度直すべきことの意味を説明しているのはそのためだ(右から左へと聞き流されているだろうことは承知の上だが)。
「事故を起こさないように注意する」ではダメだ。上記事故を防ぐには「運転席から外に出る時はエンジンを止める」という根本的な対処をしてはじめて解決になる。ヴァイオリンの演奏も同じように考えるべきだと思う。