弓の修理の痕跡:ストーリーが繋がって嬉しい

木曜は東京にてレッスン。お越し頂いた皆様有難うございました。「速く弾く」ことについてお話させて頂き分かりやすく結果が出て私としては安心しました。

先日毛替えをして頂いたトルテスクールの弓。改めて観察したら手元の部分は削り直されていることに気づいた。

手前が今回毛替えの200年ほど前と思われる弓(トルテスクール)
奥は結構酷使された140年ほど前の弓(ヴォアラン)

弓は指でボタンを回して弓の毛を張って使うものだ。それを100年もやっていればボタンのみならず接するスティックも減る。フロッグとステックとの間にガタも出る。このトルテスクール、ボタンもフロッグも後世のものだが、スティックの手元の形状に違和感があった(トルテ特有の形状ではないし細い)。継ぎ直されている可能性も考えたがそれにしては材料が古い。

やっと原因が分かった。少し短くされ削り直されていたのだ(短くすることや削り直すことはオールド弓では珍しいことではない)。指が触れて減るはずの部分が鋭角なのは削り直されたためだろうと想像がついた。その時にフロッグも作られそれに合わせて形が変わったのだろうと。

とても面白い^^。矛盾ないストーリーになった。よほど多く使われた弓でそれを直すほどの価値を認められた弓なのだ(ヘッドも直されているし。修理代金以上の価値がないと修理はしない)。誰かに愛されて長年使い続けた道具であること。そこが分かって嬉しい^^。

※別に確実な事実ではなく自分としての理解に過ぎません。ただ傷むところが傷んでいないオールド楽器はおかしいし、逆に資料通りで出来過ぎだったり完全なミントコンディションはむしろ偽物の疑いが出てきます。使われていないオールド楽器は骨董価値は高いですが自分には怖くて手を出せません(値段が高く、偽物だった時のリスクも高い)。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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