そもそも良い楽器、良い演奏技術とは

土曜・日曜は東京にてレッスン。土曜は9コマの満員大御礼!ご利用・お越し頂いた皆様有難うございました。私も頑張りました^^。

Twitterにも書いたが、西洋の楽器は空間を響かせるよう巧みにできている。ストラディヴァリやグァルネリ・デル・ジェスをはじめオールドイタリーを数百挺触って胴体の作りも確認したし、ギター類も相当数触っては構造の確認をした。

楽器の購入時にはこの胴体の作りの確認なしにはあまりにハイリスクになるからだ。そもそも鳴らない楽器なのか、弾き方が悪くて鳴らせていないのかの判断は必要だ。

有力な判断材料のひとつが「隅々まで振動する構造になっているか」だ。これは叩けば簡単に分かる。楽器全体が振動するためには振動を押さえ込んでいる要素がなければ良い。優れた楽器は叩くと隅々まで同じように振動していることがわかる。そして概して古い楽器ほどその条件を満たしているようだ。

手持ちのオールドヴァイオリン・ヴィオラ
ヴァイオリンは購入後15年程ですがいまだに楽器としての検証を続けています
ヴィオラはまだ購入して3年程度です

面白いことに、ヴァイオリンやクラシックギターやアコースティックギターなど生楽器だけでなく電気楽器でも同じ事が言える。古いフェンダーのアンプも箱が隅々までよく響く。古いギブソンのエレキギターやフェンダーのベースも同じだ。

そして良い演奏テクニックとは楽器の隅々までを響かせる弾き方だ。響くようにできている楽器の振動を押さえ込んで弾くのは愚の骨頂というものだろう。速く走る事ができる車をブレーキを踏みながら走っているのと同じ事だからだ(それが不満でより良い楽器に買い替えようとするケースは多い)。

「良い楽器とは」の命題がある程度結論づいて自分自身は楽器への探究心が薄らぎ、「良い音楽・良い演奏とは」に関心が移ってしまったが、楽器を選ぶ事・ボウイングをはじめ適切な演奏技術で弾く参考にして頂ければ←あ、探究心は薄らぎましたが、もちろんレッスンではこの手のお話は根拠を持ってきちんとできます^^。

古いギター。胴体を叩くとオールドヴァイオリンと同じような音響特性です
古いクレモナで楽器作りの技術が途絶えたわけではありません

古いエレキギター類。アンプ:低出力ですが胴体がとてもよく響きます
エレキギター:ネックがよく響きます(ハウリングを避けるため胴体は響きません)
ベース:ベースとして必要な低音までネックが響きます

アンプ出力やイコライザーに頼れない時代に生ギターやウッドベースに近づけるための工夫だったのだろう。ヴァイオリンも同じで必要に迫られての工夫だったのだろうし、ヴィオールの方が響きは優れていてそれに近づけようとしていたのかもしれない。

先人の知恵を感じさせる楽器が優れた楽器と思っても良いかもしれない。楽器選びや演奏のポイントがあるとしたら、その知恵を理解する事と生かす事だろうか。

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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