ピチカートで豊かな音を出すために

ピチカート(弓で弦を擦るのではなく、指で弦をはじく弾き方。ピッツィカートとも)で良い音を出せないケースは少なからずあります。「ペしゃ」などといった音がする場合です。良い音を出すためにはいくつかポイントがあります。

楽器の構造に沿ったはじき方を

楽器全般に言えることですが、楽器を充分振動させた良い音は楽器の構造に沿った弾き方をすることで出せるものです。そして音色ははじく場所やはじく材質で変化させることができます。

ピチカートでもボウイングと同じくヴァイオリンの構造に沿った弾き方をしないと豊かな音は出ません。ヴァイオリンの構造とは、弦を横に振動させることで駒と魂柱、バスバーの働きでヴァイオリンの胴体が振動するというものです。


やや特殊なテクニックで、エレキベースのスラップ奏法と同様、弦を上に引っ張り弦を縦に振動させて指板に当たる音を出すバルトークピチカートというテクニックもありますが、通常は弦を縦に引っ張らず横に引っ張ります。

ボウイングと同じく体の中から

ピチカートでも楽器を響かせるためにはボウイングと同じ身体の使い方をすることになります。

・指先ではなく体の中心に近い方からエネルギーを与えようとすること
・音を出す前に弦に指を置いて力をかけてから音を出す

弦を指に置いてからはじきます
指先ではなくボウイングと同じく上腕や背中からのエネルギーで弾きます

駒から離し指板の上をはじく

ピチカートは柔らかい音が求められることが多いものです。駒の近くではじくと硬質な音、駒から離して弦の中央に近づくにつれ軟質な音が出ます。この関係もボウイングの時と同じです。

ピチカートは弓で擦る場所ではなく

指板の上の弦をはじきます
(写真は被写界深度でボケを出すことで距離感を出しているつもりです)

爪ではなく指の肉で

弦楽器ははじく材質が硬い材質:硬い音、柔らかい材質:柔らかい音の関係で音色が変化します。ギターのピックなどで経験のある方も多いでしょう。

それゆえ、ピチカートでも多く求められる柔らかい音を実現するには、指の先の固い部分ではじくよりも指の肉の柔らかい部分ではじいた方が望ましいと言えます。

指を立てすぎず、指の肉が当たるようにした方が柔らかい音が出ます
なお写真のように指を立てすぎると爪が弦に当たってノイズが出ます

石田 朋也

1974年愛知県生。2000年名古屋大院修了。ヴァイオリンは5歳から始め、1993年よりヴァイオリンの指導を行う。大学院修了後、IT企業のSEとしてNTTドコモのシステム開発などに携わる。退職後の2005年より「ヴァイオリンがわかる!」サイトを開設し情報発信を行う。これまで内外の1000人程にヴァイオリン指導を行い音大進学を含め成果を上げている。また写真家としてストラディヴァリはじめ貴重な楽器を400本以上撮影。著書「まるごとヴァイオリンの本」青弓社

美しい音が好物。バッハ無伴奏がヴァイオリン音楽の最高峰と思う。オールドヴァイオリン・オールド弓愛好家。ヴィンテージギターも好み。さだまさしとTHE ALFEE、聖飢魔IIは子供の頃から。コンピュータは30年程のMac Fan。ゴッドファーザーは映画の交響曲。フェルメールは絵画の頂点。アルファロメオは表情ある車。ネコ好き。

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