立ち方・姿勢で音が変わる仕組み


ヴァイオリンの場合、他の楽器に比べても姿勢についてうるさく言われます。立ち方からして議論が多いのですが、むやみに難しくして、権威づける意図ではありません。ヴァイオリンが擦弦楽器(さつげんがっき)だからこそ、姿勢などの違いが音に現れてしまうためです。

擦弦楽器とは、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ、あるいは鼓弓や馬頭琴などのように弓の毛で弦を擦ることで音を出す楽器のことです。擦弦楽器は発音が一瞬ではなく、連続的なのがギターなどと異なりますが、これはすなわち、発音している間に起こった身体の動きが全て音に変わってしまう事になります。

声で歌うことをイメージしてみて下さい。歌っている最中に、身体を曲げたり、飛び跳ねたりすれば音が揺れてしまいます。安定した声を出すには、身体の動きや姿勢が安定している必要があります。

ヴァイオリンなどの擦弦楽器は、弓と弦が半分浮いた状態(押しつけすぎず、浮かしすぎず)にあるし、弦に振動を与えながら弦の振動を止めています。そのため、ある面では声以上にデリケートな関係にあり、ちょっとした力加減が音に影響します。このちょっとした力加減をできる限り安定させるには、立つ姿勢から考慮していく必要が出てきます。

立ち方・姿勢のポイントは「できる限り安定していること」にあります。前後左右どの方向にも安定させるためには、足は「開きすぎず、閉じすぎず」、背中も「反りすぎず、丸めすぎず」が望ましいと言えます※。

ヴァイオリンを弾くからといって特別な姿勢で弾くわけではありません。日常生活の延長で、一番安定するような姿勢が、一番いい音がして弾きやすい姿勢になります。姿勢を見直す参考にして頂ければ幸いです。

※膝を曲げたり、腰を落としたりすると安定しそうですが、後ろに押される力に弱くなります。また、足を広げすぎても前後方向の力に弱くなります。やはり、普通に背筋を伸ばし、普通に足を肩幅程度に開くのが安定するようです。

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