弓の質と張り:スピッカート(跳弓)を上手に弾くには4


前回、松脂や弓の毛について書きましたが、弓自体の能力も無視できません。良い弓で弾けば、スピッカートは容易にできます。また、弓自体の能力を引き出す張り具合もあります。

弓の毛が充分弦に引っかかることがスピッカートの大前提です。良い弓の特徴のひとつは、腕の動きを確実に弦に伝えてくれる点があります。そのため、スピッカートを弾くときでも、良い弓の方が弦に充分引っかかるため弾きやすくなると考えることができます。

トルテなどの名弓を弾くと、人間が弓をコントロールするのではなく弓に人間の方がコントロールして思いのままに跳ね回るように感じることがあります。良い弓になればなるほど、人間の方でやることは少なくなります。「楽に弾ける」ことが良い弓のひとつの条件です。

弓の張りもスピッカートの弾きやすさに影響します。かつては、弓の毛を張りすぎる方が多かったのですが、最近では張らなさすぎる方を多く見かけます。

弓の張りが強すぎても弱すぎても、弦に充分引っかからなくなります。一番引っかかりの良い張り具合が一番いい音が出るし、スピッカートもうまく弾けます。この張り具合は弓によって異なりますのでいろいろ試してみて頂きたいと思います。

スピッカートは「根性」や「練習量」だけでは弾けません。弓の毛の交換、松脂、張り具合など「弓の整備」をすることと、可能な限り良い弓を使うこと、機会があれば最高級の弓を弾いてみることも、大事な要素になります。

スピッカートをうまく弾くための参考になれば幸いです。

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