つつましやかな自己顕示


ヴァイオリンの展示会にでかけると、「俺の音を聴け」と言わんばかりに、超絶技巧曲をゴシゴシ弾いている方を見かけることがあります。

誰にでも自己顕示したい欲求はあると思います。他人より目立ちたい、他人よりよく見られたいという欲求は人間である限り当然とは思いますし、実際、自己顕示は成長の源です。

ですが、ヴァイオリンの音色という点では強すぎる自己顕示欲はむしろマイナスになると思います。自己顕示しすぎると、力ずくになりがちで音が汚くなってきます。

強く力を入れて弾こうとすると、弦の振動を抑え込んでしまいます。大きい音を出したいのであれば、むしろ、力を抜いて弦が自由に振動するようにした方が、美しく、大きな音が出るものです。

楽器が歌いたがっているのを、ほんの少しサポートしてやるような気持ちで弾くと、素直な響きわたる音が出ます。ぜひともお試しください。

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